女王蜂の役割と不思議なフェロモン
スズメバチ、アシナガバチ、ミツバチの巣の中には、1匹の女王蜂を中心に、働き蜂、オス蜂(スズメバチ・アシナガバチは秋頃になると産まれる)で構成されています。
社会性を持つこれらの蜂たちは、ひとつの巣の中で生活している「女王蜂」「働き蜂」「オス蜂」に、それぞれ役割が決められており、一生の過ごし方が異なります。
女王蜂、働き蜂、オス蜂で社会生活を送る上で、それぞれの役割り分担を持ちながら、集団で生活しています。
では、群のトップとも言える女王蜂は、どのような役割を持ち、どのような行動をしているのかを説明していきます。
女王蜂の役割と生活
ひとつの巣に1匹しかいません。
女王蜂は、ひとつの群で生活をする新社会性の蜂の集団においての事実上のトップで、繁殖に携わるメスの個体のことです。
ただしトップとは言っても、群を統率するような役割や行動はせず、生物学的には“生殖虫”とされています。
スズメバチの女王蜂 |
女王蜂は働き蜂やオス蜂に比べるとひとまわりほど体が大きく、スズメバチやアシナガバチは他の蜂(働き蜂・オス蜂)と形態がよく似ていますが、ミツバチの女王は働き蜂に比べて2倍くらい腹部が大きくなっています。
女王蜂は、他の蜂より寿命が長く、同じメスであるのに働き蜂と何が違うのかというと、決定的な違いは卵を産むことです。
スズメバチ、アシナガバチは一年で活動を終えるため、新女王となる個体は秋頃に誕生し、空中で多数のオスと交尾をするとすぐに越冬場所を探して冬を越す準備に入ります。
翌年の春頃、越冬から目を覚ますと、自身の弱った体に栄養を与えるため花の蜜や樹液を舐めて体力を回復させてから、1匹で巣づくりを開始します。その後働き蜂が誕生してくると、産卵に集中するために、巣づくりやエサ集めなど その他の仕事を一切しなくなります。
ミツバチの女王は毎年春頃になると誕生し、産まれて1週間~10日後に空中で多数のオスと交尾します。
それから夏にかけて大量の卵を巣に産みつけ、翌年の春に新しい女王蜂が誕生すると、古い女王蜂は約半数以上の働き蜂を連れ、巣を出て新しいコロニー(巣)をつくって繁殖を続けます。
巣別れをしている最中(分蜂中)のミツバチ |
ミツバチの女王は、王台という新女王となるハチを育てるための特別な部屋でローヤルゼリーを食べて育ちます。
女王蜂が放出するフェロモン
✔ 階級維持フェロモン:働き蜂の卵巣の発達を抑制したり、王台の形成を阻止するもので、女王が何らかの理由で死んで、もし巣の中に若い幼虫がいない場合は、抑制されていた働き蜂の卵巣が動き出し、やがて産卵できるようになるため、巣を存続することが出来る。
✔ 集合フェロモン:分峰の時に群飛する働き蜂を一ヵ所に引き集めることが出来る。
✔ 性フェロモン:新女王が空中で交尾する際にオスを誘引することが出来る。
女王蜂は、このようにフェロモンを利用して、オスとメスを産み分けることが出来ます。
女王蜂は、秋頃になると翌年にむけての子孫繁栄のため、それまでメスの働き蜂だけだった集団の中にオス蜂を誕生させます。
スズメバチやアシナガバチの新女王は、前年の秋頃にオス蜂と交尾をし、精液を貯精嚢に貯めた状態で冬を越し、春になって、卵を産む時に自身の貯精嚢に貯めておいた精子を卵につけ、受精をさせるとメスの働き蜂の誕生です。
女王蜂が何らかの理由で不在となった場合、女王蜂が放出していた階級維持フェロモンが放出されなくなるため、2~3週間すると働き蜂や幼虫の中から卵を産むものが出てきますが、誕生してきたものは、産んだ蜂が交尾をしていないため全てオス蜂となってしまい、群は消滅します。
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