蜂の不思議なフェロモンとニオイ成分
巣を中心に集団生活をする蜂の中には、人間に被害をもたらすものが一部含まれており、その中でも特にスズメバチの被害が多く発生し、問題となっています。
蜂がヒトを攻撃し、刺してくるのには理由があります。
基本的には巣を守ろうとする防衛本能で、巣や自分自身が危険だと判断した場合のみヒトを刺します。
蜂がヒトを刺す時、1匹だけでなく、大群で襲ってくることがあります。
これは蜂の持つ毒に、仲間を呼び寄せる役割を持つ物質が含まれているからということがわかっています。では、その物質とはどのようなものなのでしょうか?
仲間を呼び寄せる〝警報フェロモン〟
働き蜂が放出する、蜂の毒には「警報フェロモン」と呼ばれるニオイ物質が含まれています。
これは、巣の仲間に敵がきたことを知らせるニオイ物質で、さらに多くの蜂の攻撃を誘引するものです。
蜂は敵とみなしたものに毒針を刺して攻撃するだけでなく、毒液を噴射することがわかっています。
毒液は周囲に噴射され、この警報フェロモンに呼び寄せられた仲間の蜂たちは、興奮して集まり、警告することもなく※攻撃を仕掛けてきます。
(※)蜂は攻撃する前に、基本的には威嚇をしたり警告を仕掛けてきます。
また、蜂は警報フェロモン以外にも、多くのフェロモンを放出していることがわかっています。
ミツバチに刺されてしまうと、患部に毒針が残った状態となるため、安全な場所に移動したあと、速やかに毒針を抜くようにしましょう。
蜂が放出する〝フェロモン〟
蜂やアリのように集団で生活する昆虫は、体の外に特有の物質である〝フェロモン〟を分泌、放出することによって情報の伝達をしたり、蜂やアリの同じ種類の個体に対して特有な反応を起こさせたりしています。
つまり同種の他の個体に、一定の行動や発育の変化を促す生理活性物質のことで、蜂のフェロモンは、社会性昆虫特有の行動を引き起こす役割を担っています。
性フェロモン | 新女王蜂が分泌。 オス蜂に交尾行動を引き起こさせる。 |
階級フェロモン | 女王蜂が分泌。 働き蜂の産卵抑制、新女王蜂の育房室の作成に関与 |
集合フェロモン | 働き蜂が分泌。 オス蜂を巣の入り口に誘導する。 |
警報フェロモン | 働き蜂が放出する毒に含まれる。 巣の多くの仲間を誘引し敵が来たことを知らせ、攻撃をしかけるようにする。 |
エサ場マークフェロモン | オオスズメバチの働き蜂から分泌。 この匂いを付けた場所に他の働き蜂を誘引する。 集団攻撃の引き金となる。 |
蜂児フェロモン | 幼虫が分泌。 働き蜂に自分の存在を知らせる。 |
仲間認識物質 | 同じ巣の仲間であることを識別する物質。 |
蜂やアリのように分業化された高度な社会を運営し、立派な巣をつくることが出来るのは、フェロモンによってコミュニケーションが可能だからです。
ニオイには十分注意を!
上記で説明した通り、スズメバチを含む多くの昆虫達は、フェロモンによってコミュニケーションをしているため、目よりも〝ニオイ〟の情報を頼りに行動しています。
実はこのフェロモンを含む、蜂の毒液の中には、わたし達の身近な食品や日用品の中にも同じような成分が入っていることがわかっています。つまり、人間がこれら毒液に似た成分を含むものを身につけていたり、近くに置いておいたりすることで、ハチを呼び寄せている危険性があるのです。
また香水(特に花の香りなどフローラル系のもの)、整髪料、制汗剤、化粧品などには蜂を興奮させる物質が入っているため、蜂がいそうな自然の多い場所へお出かけの際には、出来るだけニオイのあるものを身につけない方がよいでしょう。
さらにヒトの汗にも反応するため、普段から清潔にしておくこと、汗をかいたら着替える・こまめにふき取るなど十分に注意してお出かけください。
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