【スズメバチ・アシナガバチ・ミツバチ】巣の比較
春になり越冬から目覚めた1匹の女王蜂によってつくられ始めた蜂の巣は、働き蜂の羽化後、夏から秋にかけて大きく成長します。
蜂の巣は、種によって大きさや形、つくる場所などが異なります。蜂の種類によって攻撃性や危険度が異なるため、巣を見分ける必要があります。
まずはヒトを刺すことがある、「スズメバチ」「アシナガバチ」「ミツバチ」の蜂の巣を比較してみましょう。
蜂の種類別、巣の比較
スズメバチの巣
蜂による刺傷被害が一番多いのが「スズメバチ」です。
攻撃性・危険性などが高いため、スズメバチの巣を発見した場合は、絶対に近付かないようにしましょう。
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コガタスズメバチの初期の巣 | キイロスズメバチの巣 | |
特徴 | ボール状で茶色っぽいマーブル模様。 基本的には出入り口がひとつで他は外皮で覆われている。 |
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大きさ | 10~40cm程度。比較的大きい。 ピーク時には、最大で1mを超すものもある。 |
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営巣場所 | 開放空間・閉鎖空間・土中などさまざま。 引っ越しをする習性をもつものも。種によって異なる。 |
スズメバチの巣は、一種の紙のようなもので、木を削り取って集めた繊維を唾液由来のタンパク質で固めてつくられています。外皮が一層しかないため、アシナガバチの巣に比べると、もろく壊れやすくなっています。
特徴的なマーブル模様は、多くの働き蜂が色んな場所で巣の材料を集めてくるためで、材料の違いからこのような特徴的な模様が出来上がります。この模様は、蜂の種類によっても多少異なり、白っぽい薄い色から茶褐色などの濃い色など様々です。
営巣場所もさまざまで、巣をつくる場所によってスズメバチの種類が分かることもあります。
土中 | 土の中や木の根元などに営巣する。 巣は一見して見えないため、登山中やハイキング時などに気付かずに近付いて振動を与えていたり、直接踏んでしまったりして刺される被害が多く発生している。 |
オオスズメバチ・クロスズメバチ等 | |
閉鎖空間 | 樹洞・床下・天井裏・壁の隙間・戸袋などに営巣する。 この中でもヒメスズメバチは最も小さな釣鐘型の巣をつくる。 キイロスズメバチはスズメバチの中でも最大級の巣で、住宅街でも多く巣をつくり、初期段階では閉鎖空間を好んで営巣するが、働き蜂の数が増えてくると軒下や庭の木など開放空間に引っ越しをすることがある。 |
キイロスズメバチ・ヒメスズメバチ・モンスズメバチ等 | |
開放空間 | 軒下や庭の木などに多く営巣する。 コガタスズメバチの初期の巣はとっくりを逆さまにしたような形で、働き蜂が誕生し数が増えてくるとボール状の巣に改築されていく。 キイロスズメバチは働き蜂の数が増えてくると閉鎖空間から軒下などに引っ越しをするため、気付かない内に急に大きな巣を発見することがある。 |
コガタスズメバチ・キイロスズメバチ等 |
アシナガバチの巣
アシナガバチは比較的大人しく、攻撃性はあまり強くありません。巣の規模も小規模ですが、市街地や、公園などの低木、あまり場所を選ばずに頻繁に巣をつくることから、都市部や市街地でも被害が出ることが多い蜂です。
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特徴 | お椀を逆さにしたような、シャワーヘッドのような形。 薄い灰色や薄い茶色など淡い色。巣穴や幼虫が直接見える。 |
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大きさ | 10~15cm程度。 | |
営巣場所 | 木の枝や軒下、ベランダの室外機など。開放空間。 |
アシナガバチの巣は樹皮の靭皮繊維を素材としており、それに唾液由来のタンパク質などを混入して作られています。
スズメバチの巣より強く丈夫で軽いのが特徴です。
蜂の巣らしい六角形の穴がたくさん見え、巣の色は白色系、灰色系で少し薄い茶色が混ざっています。
巣の利用は1年限りで、翌年以降に利用されることはありませんが、アシナガバチの巣は駆除を行っても生き残りの蜂がいる場合、再度同じ場所に新しく巣をつくることがあります。
アシナガバチは場所を選ばず営巣するため、市街地にも多く営巣します。
子供でも手の届くような低い場所に営巣するため、子どものイタズラなどが原因での刺傷被害や、洗濯物を取り込む際に誤って刺激してしまい刺されてしまうケースが多いですが、基本的に誤って刺激などしない限り危険性は低いため、害虫退治の名人で益虫とされています。
生活に支障がない高い場所や、近隣に迷惑がかからない場所であれば、出来るだけそっとしておきましょう。
ミツバチの巣
ミツバチは、スズメバチやアシナガバチとは違い、巣の利用が1年限りで終わりではなく、同じ巣を数年使い続けます。
養蜂で使用されているイメージが強いミツバチですが、野生でも多く生息しています。
スズメバチのように攻撃性は強くないため、刺激を与えなければ攻撃してくることはありませんが、住宅に営巣した場合には糞害やミツバチの集めたミツによる住宅の汚染などさまざまな被害をもたらします。
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特徴 | 巣板と呼ばれる鉛直方向に伸びる平面状の構造のみからなり、六角形の部屋が板状に重なり、段になっている。 色は白っぽい黄色のような、クリーム色のような色をしているが、大量のミツバチが巣に密着しているため、巣全体が見えることはない。 |
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大きさ | ミツバチの種によって巣板の数は異なる。巣板が10枚以上になることもある。 | |
営巣場所 | 床下、天井裏、壁間、住宅間の隙間など閉鎖空間。 |
ミツバチの腹部にある蝋腺から分泌された蜜蝋を巣の材料としており、巣板は中空の六角柱が平面状に数千個接続した構造(ハニカム構造)で、非常に強度に優れ、材料は最小限で済むという特徴があります。
ミツバチは、床下や天井裏などの閉鎖空間に、驚くほど大きな巣をつくります。
また3月~7月頃には、急に庭の木や、壁などにミツバチの大群が集まる現象がみられることがありますが、これは〝分蜂〟と呼ばれる巣別れの現象で、通常早くて数時間、長い場合でも数日から1週間以内にはその場からいなくなります。
基本的には分蜂中は暖かく見守ってあげたいですが、稀にその場で巣をつくりだすこともありますので、注意して観察しておくようにしましょう。
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