アシナガバチの1年の様子について
「アシナガバチ」は細い体でその名の通り、飛んでいる時にスラリと伸びた長い肢(あし)が特徴的な蜂です。
スズメバチ科アシナガバチ亜科に属する蜂を総称して「アシナガバチ」と言いますが、その生態はスズメバチとよく似ており、都市部や市街地でもよく巣をつくります。
アシナガバチの巣は、スズメバチの巣とは違い、蜂の巣らしい六角形の穴(育房室)がひとつひとつ外部から見ることが出来ます。スズメバチの巣のように、外皮で覆われていないため、巣穴が露出し、隠れる場所がないため、巣の上にはいつも成虫が群がっている様子が伺えます。
アシナガバチもスズメバチもその生活史(昆虫の場合、卵から孵り成長して成虫になり、子孫を残して死ぬまでのこと)は1年です。
アシナガバチの1年
地域によっても多少異なりますが、4月から5月頃にかけて女王蜂が越冬から目覚めます。
アシナガバチの女王蜂は、越冬を終え目覚めると、元の巣の場所に戻り、他の女王蜂と一緒に集まる習性があります。
アシナガバチは自分の生まれた巣をよく記憶しており、これはアシナガバチがつくりかけの巣を駆除した際に、巣の生き残りの蜂がいる場合は、(エサを捕りに行っていたなど不在だった等で)よく同じ場所に新しく巣をつくることと同じです。
元の巣(前年の)に戻ったアシナガバチの女王蜂は、花の蜜を舐めたりして過ごし、その後しばらくすると、空腹を満たした女王蜂はいよいよ巣づくりを開始します。
女王蜂は鋭い顎(あご)で、木を少しずつかじり取ってひとまとめにし、さらに噛み続けて自身の唾液と木の繊維を混ぜて頑丈な巣をつくります。アシナガバチの巣は日本の和紙のような材料で出来ているため、スズメバチの巣よりも頑丈に出来上がります。
巣穴を1~3部屋程つくるとすぐに卵を産みつけて、20日前後で幼虫から成虫へと成長し、6月頃には働き蜂が誕生しだします。働き蜂が羽化しだすと巣づくりも本格的になり、この頃には女王蜂は産卵に集中するようになります。
7月から8月頃までは、女王蜂の産卵や働き蜂による巣づくり・エサ捕り・幼虫の世話など本格的に活動しており、大人しい性質を持ちながらも攻撃性の増す時期となります。
アシナガバチはスズメバチよりも活動期間が短く、種によっても異なりますが8月後半になるとオスバチが羽化しだし、やがて翌年女王蜂となる新女王蜂も誕生し、9月中旬頃には巣や木の枝などに群がり、じっとしていることが多くなります。
オスバチ・新女王蜂が誕生すると巣上にはたくさんの蜂が群がっているため、爆発的に数が増えたようにも見えます。
10月頃の天気が良い日にはオスバチが集団で飛び回り、翌年女王蜂となる蜂と交尾します。交尾を済ませた新女王蜂は、樹洞や石の陰など寒さをしのげるような場所を探し、すぐに越冬場所へと移動します。
アシナガバチの巣の利用は1年限り
冬になり働き蜂が全滅して空になった巣は、翌年以降に再利用することはありません。
ただし、毎年同じような場所に巣をつくられる場合は、その場所が蜂にとって安全な場所で、巣をつくる環境に適した場所だということです。また以前の巣を、巣の材料として再利用することもあります。害虫が棲みかとすることも考えられますので冬の間に空になった巣は、念のため撤去しておきましょう。
アシナガバチは益虫です
アシナガバチは基本的に大人しい性質をしています。観察しようと近付いた場合も、直接巣を刺激しなければ攻撃してくることはありません。
アシナガバチは、害虫を狩ってくれる益虫とされています。農作物や庭木につく毛虫やカメムシ、イモムシなどのさまざまな害虫を幼虫のエサとするためです。
特に危険な場所ではない限り、益虫としての側面を大事して上手に共存していきたいアシナガバチですが、子どもの遊び場や通学路などに巣がある場合は、好奇心旺盛な子どもがイタズラをして刺される被害も発生しているのは事実です。
子どもの手の届かない場所(高い位置)など刺される危険性がないような場所に巣をつくっている場合は、市町村でも駆除を行っているところはあまりないようです。自宅の庭や店舗等、通学路など人がよく通る場所の駆除は、専門の業者へ依頼してみましょう。
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