ハチの毒成分とその作用
蜂は毒針を使って敵を刺しますが、普通の針で刺されるのと比べ物にならない位の痛みが引き起こります。同じ針で刺されても、どうして痛みに違いが出るのでしょうか?
蜂に刺されると痛いワケ
蜂は毒針で刺す、と言われるように〝毒〟があります。
毒が含まれていることにより、痛みや腫れ、時にアナフィラキシーを引き起こし命を落としてしまうこともあり、危険なものです。
蜂に刺された時の痛みの理由は、セロトニンやハチ毒キニンという成分が毒に含まれているためです。
蜂は、人間に比べると小さな体をしていますが、微量でも痛みが発するのは、ハチ毒の成分が人間の機能にとって重要な成分と細胞を溶解する成分が含まれているからです。
刺された際に皮膚に注入される蜂の毒による刺激や、毒成分に対するアレルギー反応によってさまざまな症状が出ます。
蜂の毒の成分は、アミン類・低分子ペプチド・酵素類の3つに大きく分類されます。
蜂毒の主な成分 | |
アミン類 | 痛み・かゆみ |
低分子ペプチド | 痛み・赤血球破壊・血圧低下・アレルギー症状 |
酵素類 | 組織破壊・赤血球破壊・アレルギー症状 |
アミン類
スズメバチ | アシナガバチ | ミツバチ | 主な作用 |
ヒスタミン | ヒスタミン | ヒスタミン | 痛み・痒み |
セロトニン | セロトニン | ||
ポリアミン | ポリアミン | ポリアミン | |
アセチルコリン | |||
カテコールアミン ※ |
※ カテコールアミン=ドーパミン・アドレナリン・ノルアドレナリン
このアミン類の中でも最も痛みを感じるのが「セロトニン」です。
「アミン」というのは、アンモニア中の水素原子を炭化水素基(CH3)でおきかえて得られる化合物の総称です。
「ハチに刺されたら尿をかけるといい」と言う言い伝え(?)のようなものがありますが、これは間違いで、蜂の毒にはアンモニアは効果がありません。これは蜂に似ている蟻(アリ)には蟻酸があるため、酸性である蟻酸はアルカリ性である尿(アンモニア)で中和すればいいと言う話からきているようです。
低分子ペプチド
スズメバチ | アシナガバチ | ミツバチ | 主な作用 |
ハチ毒キニン | ハチ毒キニン | メリチン | 痛み・痒み |
マストパラン | マストパラン | MCDペプチド | ヒスタミン遊離 |
白血球遊走ペプチド | アパミン | 溶血 |
低分子ペプチドはメリチン、ハチ毒キニン、マストパランなどを含み、神経毒、溶血等に作用します。
酵素類
スズメバチ | アシナガバチ | ミツバチ | 主な作用 |
ホスホリパーゼA | ホスホリパーゼA | ホスホリパーゼA | 組織障害・溶血 |
ヒアルロニダーゼ | ヒアルロニダーゼ | ヒアルロニダーゼ | 組織障害 |
プロテアーゼ | 組織障害 |
酵素類はヒアルロニダーゼ、ホスホリパーゼAなどを含み、酵素作用の他にアレルゲンとして作用します。
蜂の種類によって毒成分は多少異なりますが、やはりスズメバチ、アシナガバチ、ミツバチの順で毒が強く作用します。
蜂の刺傷被害が発生する蜂はスズメバチ、アシナガバチ、ミツバチ、マルハナバチ類の約20種で、これらの蜂は、敵から自分自身や巣を守ろうとする防衛本能によって、外敵を攻撃するのに毒針を使用します。
また、スズメバチやアシナガバチ、ミツバチに含まれる毒液はそれぞれ多少異なりますので、スズメバチやアシナガバチでショックを起こさない方でも、ミツバチに刺されてアナフィラキシーショックを引き起こす場合があります。もちろんその逆もありますし、一度目に刺されたのがスズメバチで、次にアシナガバチに刺されてショック症状が引き起こる場合もあり、その逆もあります。
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